呪文と踊り②(呪文)
Largo 四分音符=54
全曲236小節中、冒頭からの32小節間。
※フリギア旋法:D音から半音・全音・全音・全音・半音・全音・全音の音程で音階を構成。
主題の冒頭D音から、フリギア音階を順次登っていくように進行する。
13小節目 Poco piu mosso 四分音符=66
19小節目から、低音でこの主題が反復。
26小節目 Tempo I 。 Ob、Cla、A&T.Sax、ミュートをつけたTrp、Trb、Bar、が2度上の呪文の主題。
31小節目 この作品で1発だけのGong。
最後の小節でEbのコードを伸ばし、「踊り」へ。
Fl.で奏される最初の呪文の主題の持続音が4拍であることにヒントを得て、この冒頭部分を4分の4拍子に書き直して見たら、意外とハマってしまう。元は4拍子で書かれた?しかし、弱拍で始まる緊張感を考慮するとやはり3拍子が相応しいのであろう。
Tempo Iからの「FlとPiccのトリルの下で、スラーのついた短めのフレーズがtuttiで繰り返され、後半の速い部分に引き継がれる」のは、クリフトン・ウィリアムズの『交響的舞曲第3番「フィエスタ」』に似たような箇所がある。クリフトン・ウィリアムズは、チャンスの師匠。『呪文と踊り』は、作曲が1960年、出版が1963年、『フィエスタ』は吹奏楽版より前にオーケストラ版として作曲されたのが先で1964年の作曲。師弟の切磋琢磨が垣間見えるようで微笑ましい。ちなみに、チャンスは1961年に『フィエスタ!』というオーケストラ作品も作曲している(吹奏楽版は1975年に『呪文と踊り』の被献呈者・Hazelmanによって編曲された)。
つづく。
呪文と踊り①(成立年/編成)
原題:INCANTATION AND DANCE
John Barns Chance(1932.11.20-1972.8.16)の吹奏楽作品。
Herbert Hazelmanと彼がバンド・ディレクターを務める
Greensboro Senior High School Bandに献呈。
初演は1960年11月16日。
初演時のタイトルはNocturne and Dance(夜想曲と踊り)、
1963年にBOOSEY and HAWKES社からの出版までの間に改訂・改題。
【編成】数字はパート数、( )内は出版時のパート譜数=想定の奏者数
BOOSEY and HAWKES社のフルスコアより
Picc.1 (1)
Fls.1 (6)
Obs.1 (2)
Bb Clas.3 (12)
Eb Alto Clas.1 (2)
Bb Bass Clas.1 (2)
Bb Contrabass Cla.1 (1)
Eb Alto Saxs.2 (2)
Bb Tenor Saxs.1 (2)
Eb Baritone Saxs.1 (2)
Basns.1 (2)
F Hrns.4 (4)
Bb Cornets.4 (8)
Trbs.2 (4)
Bass Trbs.1 (2)
Baritone1 (2) ※2声へのdiv.
Basses1 (6) ※2声へのdiv.
St.Bass1 (1)
Timpani1 (1)
Perc.6
(BD,Gong,Maracas,Claves,Gourd,Tambourine,5Temple Blocks,Timbales,Whip,Bongo)
( )内の奏者数を足すと70名。
スコアの並び順に注目。木管の次にHrn.が配されており、オーケストラの並びと同様になっている(吹奏楽のスコアには、木管、Trp or Cornets、Hrn.、Trb. …と並んでいるものも多い)。チャンスは高校、大学でティンパニ奏者であり、オーケストラのスコアの並びの方が、馴染みがあったのだろう。またチャンスには吹奏楽作品だけでなく、オーケストラや合唱のための作品も作曲している。
つづく。